雑誌 「100分de名著 『愛するということ』」 ― 2014年04月12日 10時41分56秒

あまり時間がなく、読んでいる余裕がなかったため、購入していたのですが、やっと読むことができました。TVでの放送から気になっていましたが、放送を見ただけだと印象が薄くなってしまいます。テキストを読むと内容がわかりやすいです。
フロムは、愛を誤解していることを指摘し、ほとんどの人が愛の問題を「愛するという問題」ではなく、「愛されるという問題」として捉えていることや、愛の問題は「対象の問題」であって、「能力の問題」ではないと思っている。また、恋に落ちることと、愛の中にとどまっている状態を混同していることを指摘しています。
フロムは、新フロイト派(フロイト左派)にあたり、社会が人間に及ぼす影響を重視し、対人関係の重要性を強調し、治療を過去よりも現在のことに重きをおくなどの左派と言われているようです。
フロムは、人間は孤独を恐れているというのが前提で、孤独を嫌いながらも自由への憧れをもっています。そのため、必然的に人々は自由を求める方向へ進みますが、自由になると個人がばらばらになり、やがて孤独に苦しむようになります。今度は、孤独から逃げ出すために自由を放棄し、より大きな権威に身をゆだねるようになります。自由と引き換えに孤独から逃げようとした心理からファシズムは生まれることを指摘しています。
祭りやスポーツ観戦の「祝祭的興奮状態」、「集団への同調」は、孤独感を克服するのにもっとも有効的な手段として挙げています。また、ツイッターやラインなどの人との繋がりは、お互いがつながりあっていることを確認することでの安心感を得られます。孤独から逃れる3つめの方法は、「創造的活動」で何かを作り上げる作業は一時的に孤独を忘れることができ、自らの喜びになることから有効だと述べてきます。しかし、仕事は孤独から逃れるために有効だとはしていません。
「非生産的構え」と「生産的構え」という市場原理からの考え方に影響し、資本主義では、人間に求められることが変わってきていることなどの解説があります。内容は幅広く非常に興味深いです。社会構造から、人々への影響を説明して、そこから抜け出すためには、愛することが必要であることが書かれてあります。経済を中心とした社会から、人間中心の社会への転換が必要であることが書かれてあります。
最後にフロムは、「人は意識の上では愛されないことを恐れているが、ほんとうは無意識の中では愛することを恐れている」と言っています。内容が豊富で非常に現代に必要なことが書かれてあるように思いました。早速、書籍を購入しました。