書籍 「菊と刀」 (2) ― 2009年01月29日 22時39分15秒
書籍は、13章に細かく章が分かれてあり、読みやすいです。感想も内容が面白いので、各章ごとに記載していきます。第2章の内容は、戦時中の日本人の行動に関する調査した内容です。
第2章 「戦時下の日本人」
日本が戦争を正当化するために依拠した前提も、アメリカの考えとは正反対であった。アメリカの考えに方によれば、戦争の原因は枢軸国の侵略行為にあった。日本、ドイツ、イタリアは、他国を征服することによって国際平和を侵害した。一方、日本は戦争の大義をほかの観点から見ていた。各国が絶対的な主権を持っている限り、世界の無秩序は一掃されない。日本は、国際的な上下関係を確立するために戦う。その階層の頂点に立っているのは日本である。日本は、大東亜からアメリカ、イギリス、ロシアを排除すべきであり、あらゆる国は、おのれの「所を得る」べきであり、国際的な階層の中に組み込まれ、世界を構成すべきである。日本では、階層というものに高い価値を置いていた。
日本は、太平洋戦争において勝利すると考えていた。その理由は、アメリカで一般的に考えられていた根拠とは異なっていた。日本は、精神が物質を制する戦いに勝利する。物的資源には限りがある。モノの寿命は千年もない。それは理の当然であり、物質的な力は必ず負ける。精神はすべての源泉であり、不滅なものである。モノはもちろん必要なものであるが、精神に次ぐものでしかない。
日本国民は、戦中、戦後においても天皇を、批判を超越した存在と見なしていた。アメリカ人にとって、このことは胡散臭いものに感じていた。日本の歴史を調査したアメリカ人は、天皇はどうして保守的な国民を束ねる正真正銘の要に成りえたのであろうか、最近(明治)になって、天皇は日の当たらない場所から、担ぎ出された存在であり、もともと国民にとって天皇は存在しないに等しかった。いずれにしても、天皇に対する尊敬の念は、ヒトラーに対する崇拝と同列に置くことはできない。
アメリカは、自由と平等を原則とする国家であり、あらかじめ特別な人間が存在することは許されない。この第2章では、特に天皇に関する日本人の考え方が書かれてあります。アメリカ人にとって、天皇の存在が理解できず、しかも、批判もできず、服従する日本国民を不思議に感じることが書かれてあります。この当時のアメリカは、日本の歴史を詳細に調べているのが実感できます。著者は、日本人の捕虜を詳しく調査していました。日本人が読んでも、戦中の日本人の異常な状態を実感することができます。
「菊と刀」、ルース・ベネディクス、(角田 安正)、光文社古典新訳文庫