書籍 「経済行動と宗教 日本経済システムの誕生」 ― 2015年02月07日 15時18分53秒

新聞に広告があり、さらに新聞の書籍紹介のコーナーで記事になっていたので、読んでみたくなりました。
日本の独自の経済システムの構築には、独自の宗教が関わっているとの話から始まります。そのため、主に日本とイギリスを比較して、欧米と日本の経済システムの違いが書かれてあります。日本とイギリスの古代から人々の生活を把握して、その人々の生活と政治体制、そして、経済に関して内容へと広がっていきます。社会を詳細に調べることで、経済のシステムを明らかにして、日本の経済システムの誕生や変化などが書かれてあります。
日本とイギリスにおいて、根底的に違いがあるのは、個人主義の考えた方であり、この違いが生じたのが、宗教によるところが大きい。イギリスは、神と人が一対一の関係であり、宗教的に個人主義であり、個人の独立と公共の利益を重視する個人主義を生み出した。日本は、仏教の易行化によって、世俗の職業生活で修業しながら求道により自己実現を目指す個人主義であり、個人とそれを評価する身近な他者の集団から構成される。自己表現と自己実現に価値をおく個人主義ができあがった。
日本の集団行動は、個人の弱さを補って競争に打ち勝つための行動ではなく、より高い自己実現に至るための創造的な求道の方法、達成度を評価するためである。そのため、個人の目的が集団の目的よりも優先される高度な個人主義的となった。
日本の個人主義から日本経済は、需要主導型経済であり、たとえば「ものづくり」は消費者による評価によってはぐくまれ、そのもとで高度な洗練れた特質の発展をしてきた。日本の集団や組織の基本的な特質は、組織自体が求道主義に源流を持って、経済的効率性や社会貢献などの「求道的」目的を追求する主体となる。
日本は、明治以降にイギリスの供給主導型を導入し、需要主導型システムに供給主導型システムへの転換をしてきた。しかし、高品質商品の大量生産は失敗して、供給主導型の困難さが浮き彫りになった。これからは、需要主導型システムに供給主導型システムの融合が必要になる。今後の日本の経済システムの方向性が感じられました。
特に気になったところは、求道の成果を相互に評価するために身近な他者との協業関係が自己目的化し、求道の方法を争うためのグループ行動が過度のグループへの忠誠に帰着すると全面的同一化となる。この場合、政治に利用すると危険性を生じることになる。過去に軍国主義による大きな問題が生じた。日本の個人主義は、内在的な欠陥を意識しつつ、経済活動に積極的な意義と特質に目を向ける必要がある。突然、日本全体が軍国主義に傾いたのが日本人の宗教観からきている個人主義にあるのがわかります。これは、日本社会に備わっているもので、政治家のリーダーにより、軍国主義に変化する恐れがあるのが感じられました。しっかりと読むと、かなり奥深い書籍でした。
「経済行動と宗教 日本経済システムの誕生」、寺西重郎、勁草書房